緊急コラム「Zobiは東京芸大になぜ合格する?」

2016/03/18

緊急コラム「Zobiは東京芸大になぜ合格する?」

(1)〈東京芸大油画へ現役合格!〉

2016年、春。
今年もZobiから東京芸大の油画へ、3名合格しました。
そしてそのうち1名は「現役合格」でした。
国内最難関といわれる芸大油画に、Zobiは遂に「現役合格者」を送り出すことができました。

これまでの6年間のZobi東京芸大合格者をふりかえって見てみましょう。

2016
油画/札幌北高出身1名(現役※)、札幌大谷高出身1名(1浪)、札幌手稲高出身1名(2浪)
2015
油画/札幌開成高出身1名(1浪)
デザイン/札幌北高出身1名(1浪)
工芸/札幌光星高出身1名(1浪)
2014
油画/岩見沢西高出身1名(1浪)
建築/札幌大谷高出身1名(現役※)
2013
油画/札幌国際情報高出身1名(2浪)
2012
デザイン/立命館慶祥高出身1名(1浪)
2011
芸術学/旭川東高出身1名(現役※)

特にここ4年間は、平均倍率約20倍(!)の「油画」へ連続して合格しています。
このコラムでは、これから芸大・美大受験を目指す皆さんに少しでも「東京芸大を受験する」ことをリアルに感じてもらえるよう「合格した理由」について、少しだけお話します。

〈東京芸大入試の変化〉
東京芸大の入試準備は、油画を含めて近年大きく変化しています。
一昔前までは、東京都内の大手美術予備校で2浪、3浪、4浪と一般大学に比べて長い浪人生活を経て入試準備としての実技習得が不可欠と認識されていました。
でも、Zobi生の合格者を見てわかる通り高倍率の油画であっても「現役合格」は充分可能です。
油画の定員は55名。これはつまり、「55通りの絵」「55通りの表現」「55通りの個性」を芸大が求めているということです。特に油画は、現在では一部大手予備校が合格者を独占するということは近年激減しています。これは、似たような同じような絵は合格させないということの証です。ですから札幌にいても、しっかりと綿密に計画された「年間制作カリキュラム」と入試に対する「正確な情報」があれば、わざわざ高い経費を払って東京で実技準備をする必要などいまは全くないといえる時代なのです。

〈受験生の個性を伸ばすトレーニング〉
前述した油画の「55通りの絵」とは、実際の入試でどういう絵を描ければよいのでしょう。
Zobiは、このことに早くから着目し、受験生一人一人の個性を大切に育む実技トレーニングとはいったいどういうことなのか試行錯誤を繰り返してきました。入試選抜である以上多くの美術大学の入試実技それぞれに「傾向と対策」が存在します。ただし、東京芸大に関してはこの「傾向と対策」に振り回されすぎると受験生の個性がないがしろにされてしまいます。
受験生の個性とは、たとえば美術部で高文連や公募展のために制作した作品の中にもたくさんのヒントが生み出されています。
ですから、私たちは生徒たちに美術部で制作した作品もよく見せてもらいますし、高文連などへの出品に関しても積極的に制作するよう促しています。実際に今までZobiから東京芸大油画に合格した全員が美術部出身で、ほとんどの人が部長経験者だったり、高文連全国大会選出や全道優秀賞などの受賞者です。
今年度現役合格した生徒の入試本番で制作した作品は、やはり彼女が高校の美術部で培ってきた嗜好性、筆使いなどが色濃く反映されたものでした。こうした受験生一人一人の好みや感性を的確に見抜き、より高いレベルに洗練されたものへと伸ばしていく指導力、技術が必要なのです。
もともと私たちが最も警戒してあえてしてきませんでしたが、一部の予備校でよくやっているような、講師が自分の絵の描き方をそのまま生徒に伝授していくような指導では話になりません。
また一昔前のように傾向と対策だけを考えた画一的な「受かる絵作り」はもう通用しないのです。ただし芸大入試レベルで要求される個性とは、一朝一夕には到底見つけることはできません。自分にしか描けない絵を描くことができるようになるためには、どうしてもしなくてはならないことがあるからです。

 

(2)〈基本の大切さ〉

入試実技、特に東京芸大油画における油彩制作に必要な個性とは「自分の視点・世界観」とそれを具現化する「表現力」です。ともすればこの表現力とは、何か特別な油彩技法やマチエールといった入試のための特殊な技能のことのように一般的には誤解されがちです。でも、皮肉にもそういう特殊な技能を磨けば磨くほど芸大合格は遠ざかるでしょう。表現とはそういうことを指してはいないからです。
また、私たちZobi講師陣が考える個性とは、当たり前かもしれませんが、ちゃんと自分の目で見て感じ、そしてそこから考えを働かせるところから出発していくことがだんだんと自立した自分の視点と世界観を持つことに繋がると考えます。また、「表現」と言われると、好きなものを好きなように描くと思われがちですが、それだけでは見る人に伝わる本当の表現にはなりません。自分の視点や考え方がきちんと伝わっているのかという客観性も同時に必要なのです。
では、どうしたらいいのか?そこでZobi講師陣が行っているのは、好きなものを好きなように描くことだけでは表現にならないと言いつつも、否定しているわけではなく、やはりまずは個別性に入る必要があるので、受験生一人一人の好みや感性を、できるだけ素直に楽しんで表現できる方法を身につけることをやっていきます。と同時に、客観的に伝えていくための力をつけていくという、ハイブリッドな学習法を実践します。このことについての詳細はコラム3でもその取り組みの一部を紹介しますが、まずは、油彩技法の基本をしっかりと習得することです。高校の美術部で制作してきた経験を生かして(もちろん未経験でもかまいません)さらに深く基本を理解し身につけることが必要なのです。「最初にそろえなければいけない絵具はどんな色なのか?」「どんな筆が必要なのか?」一見おろそかになりがちなこうした基本を身につける経験があってはじめて、より個性的な表現や技法を発見することへとつながっていけるのです。
絵具の扱いは、基本とはいえ実技制作を通してアドバイスされないとなかなか理解しにくいものです。ここでは、これ以上深く触れることはしないでおきます。

もうひとつ、Zobiが大切にしている基本に「デッサン(素描)」があります。
東京芸大油画の実際の第一次試験「素描」、第二次試験「素描」入試問題を見てみましょう。

平成27年度
第一次試験
素描「モチーフを描きなさい。」
(水の入ったビーカー、白い球体、炭、光沢のあるシルバーの布)
第二次試験 (※注  平成28年度は第二次試験の素描は廃止。絵画のみ制作。)
素描「折り紙を好きな形に折って、それをモチーフにして描きなさい。」

第一次試験の素描では、出題を
(1)どのように理解したか。
(2)どのように観察したか。
(3)どのように表現できたか。
以上の3点を主に絵画表現の基礎的な描写力を評価します。

受験生はとかく入試課題の特殊性にばかり目が行きがちですが、絵を描くための究極の力とはデッサンの練習を通じて身につけた「客観的な観察力」のことです。どれだけ感性豊かにアイデアや構成が頭の中に生まれても、そうしたイメージを具体的にリアリティを持って再現し描くためには「デッサン力」が不可欠なのです。
木炭、鉛筆、それら二つの混合技法を基礎から学び、石膏、静物、人物、風景、そして様々なイメージをモチーフとしてデッサンを描く練習が必要なのです。ただ、東京芸大合格を目指したデッサン力の養成だからと気後れする必要は全くありません。大切なのは技術ではないですし、ましてや特殊な技法を駆使した職人芸のようなデッサン力が必要なわけではありません。あくまでも「素直な目」でモチーフをよく観察し、ていねいに描くことです。そうした基本の大切さを理解し積み重ねていくことの先に、東京芸大油画への現役合格があります。しかも、そうしたことを心がけて実践していくことは、実は誰でもやっていけることなのです。

では、実際に表現力や構成力、独自の視点・発想力を養うにはどんなトレーニングが効果的なのかを見ていきましょう。

 

(3)〈表現力を養うドローイング制作〉

Zobi絵画科の最も特徴的なカリキュラムにこの「ドローイングゼミ」があります。
目的は大きく分けると2つ。
(1)構想力を養う。
(2)構成力を養う。
絵作りに必要な要素をこのドローイングで、少しずつ身につけていきます。東京芸大油画の入試における「絵画」では、構想力、構成力に加えて形態と色彩による総合的な造形表現能力が評価されます。これらの表現力を日常的に制作するカリキュラムとして行われますが、期間は約一年間。できるだけ春からスタートしてデッサンや油彩、着彩とほぼ並行して作業を進めていくのが理想的です。一枚の紙に、毎回自由に発想してイメージを描き続ける作業(なかなか伝わりにくいのですが)は、楽しみながら手を動かすことが自然と習慣化することへとつながっていきます。今春の現役合格した生徒は実際に「毎回の油絵制作前に、このドローイングを実施することでとてもいいウォーミングアップになった。」と話していました。
ドローイングに使用する画材も自由です。サインペン、マジック、ポスカ、パステル、オイルパステル、クレヨンなど様々ですが、これらの画材からも実際の油絵制作にも転用されていく場合もあります。
絵画制作に必要な構想力とは何かを一言で説明するのは困難です。ドローイングでは、与えられた言葉のイメージやモチーフの特徴をとらえつつ大胆に飛躍、発展させて画面に取り入れていく作業になります。それは単なるエスキース(下絵)を制作することとは大きく異なり、構想力や独自の発想力のきっかけになる画面を残していくことに近いかもしれません。
美術部の油絵や絵画制作などにもこうしたドローイングの体験はとても有効な練習だといえるでしょう。デッサンなどの基本とあわせて、常にイメージを自由に膨らませていける経験値をこのドローイングゼミを通じて確実に増やしていけるでしょう。

〈美術史を学ぶことの重要性〉
あまり知られてはいませんが、Zobiでは毎週土曜日絵画科志望者を対象に「美術史ゼミ」が開講されていました。このゼミでは「原始古代~現代までの美術史」をダイジェストで学び、多くの画像資料にふれることができる授業でした。合格した浪人生も現役生もこの授業でのメリットを次のように話しています。「色々な画家の作品を見ることでダイレクトに自分の絵にも応用できた。」「自分自身がどういうタイプの作品が好きなのかがわかった。」これらの感想からもわかるように、単なる講義としてではなく、自身の制作にも応用できる大きなヒントとなっていることが重要なのです。特にいまの高校生は、美術や絵を描くきっかけがゴッホやピカソではなく、身近にあったマンガやアニメだったということがよくあります。だからこそ実技や絵画制作を本格的に学ぶ美大受験のタイミングで、美術の歴史や作品にふれる機会というのはとても貴重な体験になるのです。多くの画家やアーティストは、様々な経歴やエピソードを持っているものです。このゼミの最大の狙いは楽しくアートにふれることと同時に、受験生一人一人の制作にすぐに役立つ「参考資料」を収集できることにあるのです。
制作や入試実技に直接結びつかないようにみえる「美術史」。その中身は、実は受験生にとってまさに個性を探す道標となる作品と出会うことのできる授業になっているのです。

 

(4)〈確かな情報と芸大ZobiOBのバックアップ〉

人気の高い東京芸大は、実は油画に限らずどのコースについても無数の誤った受験情報であふれています。なかにはほとんど都市伝説のような情報まで、まことしやかに語られていることも多くあります。大切なことは、情報に振り回されることなくシンプルでオーソドックスな技法と素直なデッサン力を基本として、個性をはき違えることなく、その人にしかできない魅力ある表現を発見することが大切です。
2016年現在、東京芸大油画には4年生から1年生までのすべての学年にZobiOBが在籍しています。芸大油画の授業内容や学生生活の様子、制作課題などについて学生の実体験から届けられる生の情報をZobiは大切にしています。今年度の入試直前にもやはりOBが駆けつけてくれて、芸大油画志望の受験生一人一人へむけて、長い時間を割いて指導やアドバイスをしてもらえました。また、別なOBからは、同学年の芸大生を通じて得られた貴重な情報をベースに入試直前には連日、試験本番を想定した「模試形式」の制作が実施されています。またこのような入試対策にとどまらず、こうしたOBからの日常的な芸大生活の情報をもとにして一年間という長いスパンで制作カリキュラムが綿密に組み立てられているのもZobi絵画科の最大の特徴といえるでしょう。

〈芸大合格を目指す高校生にとって1番大変なこととは?〉
最後に、東京芸大を目指す高校生にとっての日常生活とは、具体的にどんなことが大変なのでしょうか?Zobi生が芸大に合格する理由とあわせて考えてみましょう。

「高校生活は忙しくて大変!」
定期テスト、校内模試、学校祭、体育祭、修学旅行などの校内行事、そして部活動や生徒会活動。特に定期テストの直前1週間前や学校祭などの準備期間にはどうしても実技に時間をとることができなくなってしまいます。絵が描けなくなるストレスも含めて高校生活の日常的なハードさはどの受験生も感じているようです。

「勉強が大変!」
東京芸大をはじめとする国公立芸大は、大学入試センター試験(主に3教科)を受験しなくてはいけません。東京芸大に関しては実技と学科の配点比率は公表されていませんが、ある程度の得点は必要です。科目数は決して多くありませんが苦手科目の克服など実技と学科対策の両立は生易しいものではないようです。

「絵を描く時間の確保が大変!」
Zobiでは、例えば東京芸大油画を目指す受験生が練習するべき実技として、前述した通り主に「ドローイング制作」「デッサン制作」「油彩制作」の3つになります。特に高校に通う現役生は夜間と土日にしか制作時間がとれません。しかも1点1点完成度を持った絵を描くためには高校生のレベルでは時間がとにかく必要になります。高校が終わってから、あるいは高校がお休みの日を利用してコンスタントに日常的に制作時間を確保することは本当に大変なことなのです。

これらの感想は、東京芸大を含む全国芸大美大に合格した現役生全員が、ほぼ同様に持っているといえます。

 

(5)〈東京芸大へ。はじめの一歩を踏みだす春に。〉

2016年、Zobiから東京芸大油画を受験した生徒は実はごく少数で10数名しかいません。その少人数の中から現役生を含む3名合格という数字はやはり驚異的な合格率といえるのではないでしょうか。芸大以外の油彩科を目指している生徒は他にもたくさんいましたが、東京芸大にチャレンジしたのは意外にも少なかったのです。
そうした少ない人数しか受験しない最大の理由は、道内の受験生は東京芸大をはじめから無理と決めつけあきらめているからなのです。良くても記念受験程度にしか考えていない。私たちはこのことをいつも危惧しています。せっかく実力もセンスもあり、高文連などでも優秀な成績を残していても「えーっ、芸大なんて無理無理!」と思い込んでしまうのです。
Zobiで東京芸大を目指す人は、はじめから芸大を志望する人もいますが、高校生の頃は別の美術系大学を目指していて浪人してから目指し始めた人、Zobiに通うようになって段々と意識するようになった人など様々です。でもだいたい始めはどの生徒も「自分が芸大なんて目指していいのかな?」と自信無げにおっかなびっくり尋ねてきたのを覚えています。たしかに東京芸大油画は何度もお話したとおり20倍前後の高倍率、ノイズまみれの情報が錯綜していますから、怖気ずくのも無理はありません。ほとんど雲の上のような場所のようにイメージされてしまっているそれらの印象をできるだけ早く払拭していくことが重要です。そのために前述したようにOBたちからのメッセージはとても助けになっていて、Zobiではいま急速に芸大に対する意識が変わりつつあります。
本来、美術とは私たち人間にとって最も文化的で根源的になくてはならないものです。こうした美の世界にふれることで培われる「創造性」は、専門的な美術の世界だけにとどまらず広く社会でも必要な資質となりますし、豊かな人材として成長するためにも欠かせないものであることはいうまでもありません。
今年、東京芸大油画の2次試験終了後に無記名のアンケート調査が実施されています。その中には「高校に美術の授業はありましたか?」「美術の先生はいましたか?」という項目がありました。これは、美術や芸術の教育の現状に対する調査だと考えられますが、高校から美術の授業がなくなっていく傾向に対する危機感からのアンケートなのではないかと類推することもできるでしょう。
私たちZobiスタッフは、今後も北海道から東京芸大を目指す人が一人でも多くなり、誰でも努力次第で合格できることを証明したいと思っています。受験生への応援はもとより高校の美術の先生方、美術部の顧問の先生方、そして父母の方々と私たちZobiスタッフが綿密に連携しながら、東京芸大進学がもっともっと現実的で身近なものになってほしいと考えています。
Zobiは、ただ東京芸大合格者を輩出することだけを目的とするのでははありません。美術や芸術を志す高校生のみなさん一人一人の未来が、東京芸大合格をきっかけに無限にそのはるか先へとつながり広がっていくことを願っているのです。

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